会 長 挨 拶
チームケア学会 会長
小笠原 泰
チームケア学会会長の明治大学の小笠原です。学会創立以来、これまで4回の学会を開催してまいりました。各回のテーマは『なぜ「ケア」であり、「チーム」であるのか』『当事者としての高齢者の方の「生きる覚悟」』、『あなたはどんな最期をむかえたいですか』、そして、第4回のテーマは『人生100年を生きるためのリテラシー』でした。
ここであらためまして、本学会創立の目的や活動の方針について述べさせていただきます。世界の先鞭をきり、かつ例を見ない未曾有の超高齢化を急速に迎えつつある日本社会において、高齢者の「ケア(気にかける)」を「チーム(多職種連携)」という観点で考えることは非常に重要であると思います。敢えて、「介護」という言葉と「多職種連携」という言葉を使っていません。
日本社会において、常態化する「とりあえずカタカナ」という意味ではなく、「介護」と「多職種連携」という言葉の有する意味の限定性を排除したいからです。「介護」とは違い、「ケア(気にかける)」は、より包括的かつ双方向性の概念です。また、医療的な意味では、「ケア(気にかける)」という概念、これまで支配的であり、機能してきた「キュア(治す)」という概念の相対化をもたらす概念です。
超高齢化社会を迎える中で、この医療概念の転換は重要であると思います。また「多職種連携」では、既定の関係者を、その階層関係性を念頭に、「連携すること」に主眼が置かれています。そして、連携をすれば、課題は解決するという前提です。一方、「チーム」とは、そもそも、目的遂行のためにメンバーが集まるのであり、目的遂行のためには、チームメンバーに既定はなく、階層関係性も念頭に置きません。
「ケア」とは、関わる相手の成長を助け、可能性を自覚させることですので、「ケア」の一方的な受けてではなく「ケアするチーム」のメンバーである高齢者の方の「チームケア」の当事者としての自覚を問うことも、本学会の重要なミッションであると思います。この説明で、なぜ「チームケア」という言葉を使ったかをご理解いただけたかとおもいます。
次に、なぜ学会かということです。高齢者の「ケア」が日常化・社会化するなかで、「チームケア」という概念を定義し、体系化・理論化し、社会においての認知を得ることが、喫緊の課題であると思います。この意味で、学会かすることが意味を持ちます。
この学会で、チームケアを考える上で、チームケアとは何かも自由に考えていかなければならないと思います。その意味で、本学会は、多様性を前提においた、開かれた、実験的な学会であると思います。故に「ケア」を専門としない、経営組織論と社会システムデザインが専門の私が初代会長を務めさせていただいているゆえんであると思います。
学会メンバーの方々には、「チームケア」を実践・確立するという「目的」を共有化し、「自律」的に活動し、「習熟(プロになる)」を高めていっていただければいいと思います。それが、チームケア学会の価値を高めることにつながると思います。