チームケア学会倫理指針

目的

本研究倫理指針は、チームケア学会会員が医療、介護福祉において実践するすべての行為に対しての質的向上を目指して行う介入研究や事例研究の活動において、その研究倫理のあり方を示す。
  1. 本研究倫理指針は、チームケア学会員の行う介護福祉実践および知識の向上に寄与することを目指して行われるすべての研究活動を含む。
  2. これらの研究活動は、チームケア学会での臨床研究発表や事例報告、また、その成果としての研究論文の執筆や短評報告までのすべてを含む。

基本原則

1.科学的合理性と倫理的妥当性の確保

  • 個人の尊厳および人権を尊重して研究活動を実施する。
  • 科学的合理性および倫理的妥当性があることが認められる研究活動を実施する。

2.説明と同意の実施

  • 研究者は対象者に対して、十分な説明を文書で行い、研究参加の同意を文書で得なければならない。
  • 研究者は説明と同意の手続きを研究計画に盛り込まなければならない。
  • 障害や疾患を有する人,外国人など,認知・言語能力上の問題や文化的背景の違いなどのために,通常の方法の説明では研究内容の理解を得られたと判断できない研究対象者の場合には,理解を得るために種々の方法を試みるなど最善を尽くす必要がある。その努力にもかかわらず自由意思による研究参加の判断が不可能と考えられる場合には,保護者や後見人などの代諾者に十分な説明を行い,文書で代諾者から同意を得なければならない。

3.研究成果の公表

  • 研究者は研究対象者の個人情報を保護するための必要な措置を講じなければならない。

研究者の責務

1.研究計画書の作成及び研究者等に対する遵守徹底

  • 研究責任者は、研究の実施に先立ち、適切な研究計画書を作成しなければならない。研究計画書を変更するときも同様とする。
  • 研究責任者は、研究の倫理的妥当性及び科学的合理性が確保されるよう、究計画書を作成しなければならない。また、研究計画書の作成に当たって、研究対象者への負担並びに予測されるリスク及び利益を総合的に評価するとともに、負担及びリスクを最小化する対策を講じなければならない。
  • 研究責任者は、侵襲(軽微な侵襲を除く)を伴う研究であって通常の行為を超える介護行為を伴うものを実施しようとする場合には、当該研究に関連して研究対象者に生じた健康被害に対する補償を行うために、あらかじめ、保険への加入その他の必要な措置を適切に講じなければならない。
  • 研究責任者は、研究計画書に従って研究が適正に実施され、その結果の信頼性が確保されるよう、当該研究の実施に携わる研究者をはじめとする関係者を指導・管理しなければならない。

2.研究の進捗状況の管理・監督及び有害事象等の把握・報告

  • 研究の開始時、所属施設の長または管理者に研究計画に関しての報告および開始の報告を義務とする。
  • 研究責任者は、研究の実施に係る必要な情報を収集するなど、研究の適正な実施及び研究結果の信頼性の確保に努めなければならない。
  • 研究責任者は、研究の倫理的妥当性若しくは科学的合理性を損なう事実若しくは情報、または、損なうおそれのある情報であって研究の継続に影響を与えると考えられるものを得た場合には、必要に応じて、研究を停止し、若しくは中止しなければならない。
  • 研究責任者は、研究の実施において、当該研究により期待される利益よりも予測されるリスクが高いと判断される場合、または、十分な成果が得られないと判断される場合には、当該研究を中止しなければならない。
  • 研究責任者は、侵襲を伴う研究の実施において重篤な有害事象の発生を知った場合には、速やかに、必要な措置を講じなければならない。
  • 研究責任者は、研究を終了(中止の場合を含む。)したときは、必要な事項について所属施設の長または管理者に報告しなければならない。
  • 研究責任者は、他の研究機関と共同で研究を実施する場合には、共同研究機関の研究責任者に対し、当該研究に関連する必要な情報を共有しなければならない。

3.研究実施後の研究対象者への対応

  • 研究責任者は、通常行う行為を超える介護行為を伴う研究を実施した場合には、研究実施後においても、研究対象者が当該研究の結果により得られた最善の行為を受けることができるよう努めなければならない。

4.先行研究の明示

  • 研究とは、先行研究のレビューの上で、何がわかっているのか、わかっていないのかを明確にし、新たな知見を積み重ねることでることである。
  • 研究においては、参考にした先行研究を明示するとともに、先行研究が示す知見と自らが述べる知見を区別して述べる。
  • 先行研究からの知見を自らの研究に援用した場合、その先行研究について原著者名、文献、出版社、出版年、引用箇所を明示しなければならない。
  • 長文の引用、図表の転載等を行う場合には、原則として出版社もしくは原著者の承諾を得る必要がある。
  • 引用を行う場合は、原典を確認する。原典が入手できない等やむを得ない場合のみ「孫引き」が許される。
  • 他の著作物から引⽤をする場合、出典を明記しない引⽤は剽窃(plagiarism)と⾒なされる可能性がある

5.盗用・剽窃の禁止

  • 他者の行った研究成果をそのまま、あるいは僅かに変えただけで自分の論文に使用した場合、それは盗作もしくは剽窃として糾弾・告発される行為である。
  • 他の著作物から引⽤をする場合は、必ず出典を明記してください。出典を明記しない引⽤は剽窃(plagiarism)と⾒なされる可能性があります。

6.匿名性の確保について

  • 事例を用いた研究または調査研究を行う場合、対象者(当事者)を特定できないように匿名化する。
  • 事例を使用する研究の場合、あるいは口頭発表をする場合、前もって当事者から文書で承諾を得る。
  • 当事者から実名公表の承諾を得ている場合には、その旨を明示する。
  • 調査研究の場合、調査対象者・地域・団体等を匿名化する必要がある。

7.捏造の禁止について

  • 調査データを捏造したり、データの一部分を改竄すること、さらに分析・解釈を容易にするために恣意的に特定のデータを削除することは、厳に禁じなければならない。
  • データの部分的な改竄も捏造と⾒なされる。解釈を容易にするための恣意的なデータ削除も同様で、データの⼀部を削除したり、代表的なデータのみを示す場合には、その選択の客観的な基準を明示しなければならない。

8.二重投稿・多重投稿の禁止

①二重投稿・多重投稿

  • 実質的に同一内容の原稿を同時に2つ以上の雑誌に投稿することはできない。また、既に出版物に掲載されている論文と実質的に同一内容の原稿を投稿することもできない。こうした二重投稿が明らかになった場合は、投稿原稿は即時に却下される。(ここで言う「雑誌」「出版物」には、学会の発表論文集などのように要約された内容のみを掲載している出版物、あるいは、大学の紀要などのように頒布範囲が限られている出版物は含まない。しかし、書籍やその中の章は含まる。)
  • 投稿した原稿と類似した内容の原稿を他の雑誌に投稿している場合、あるいは、既に出版している場合は、投稿する際に、それらに関する情報を提供しなければならない。

②連続した研究の場合

  • 既に他の研究誌に投稿あるいは公表した原著論文をもとにして本学会において研究論文等として発表する場合は、内容の変更箇所を明示しなければならない。
  • 前回発表した研究論文の成果を踏まえて、次の研究論文を執筆し、投稿する場合には、前著と同一でない旨を明示しなければならない。
  • 投稿した原稿と類似した内容の原稿を他の雑誌に投稿している場合や既に出版している場合には、研究論文等を投稿するにあたり、当該論文を添えて提供しなければならない。

9.査読における規定

①匿名性

  • 研究業績の査読を行う過程において、著者と査読者の双方の匿名性が保持されなければならない。

②公平性

  • 査読は、研究業績の評価を含むものであるため、査読者は全文を読了した上で、公正・客観的に評価を行い、かつ指摘する内容が明確でなければならない。
  • 査読は、著者の人格を傷つけるものであってはならない。
  • 査読結果に対して、著者から要求がある場合には、その反論が許されなければならない。
  • 査読者は、その内容を自分の研究に利用したり、第三者に明かしたりすることは許されない。

③手続き

  • 査読を依頼されたとき、査読原稿の内容を見て、自分は評価を行うには不適格であると判断した場合には、査読を辞退し、原稿を返却することができる。

10.利益相反

  • 当該研究に係る利益相反の状況を把握し、研究計画書に記載しなければならない
  • 研究者等は、研究計画書に記載された利益相反に関する状況を、インフォームド・コンセントを受ける手続きにおいて研究対象者等に説明しなければならない
  • 学会発表時または論文の際にCOIを開示すること。

11.データ管理の留意点

  • 調査研究で得られたデータは、調査対象者個人が特定できる形で発表されてはならない。
  • 調査研究のデータ管理は厳重に行わねばならない。これらの個人情報を含んだデータシート・記入用紙や、コンピュータファイルなどについては、個人を特定できる情報(氏名など)を削除した上で管理する。また、各データファイルは出来るだけパスワードプロテクションなどのセキュリティー対策を講じた上で、慎重に取り扱うこと。
  • コンピュータ上のデータに関しては、そのコンピュータが完全にインターネット環境から独立している場合を除き、ファイル交換ソフト、スパイウェア等の影響を排除できるような配慮を行うなうべきである。
  • 調査データの物理的な管理は、施錠可能な引き出しや棚に収納するなどして、第三者の目に触れることがないようにしなければならない。
  • データ処理のためにプリントアウトされたものについても、研究発表や研究論文執筆後、必要がなくなった時点で破棄されなければならない。

12.研究活動におけるハラスメントの禁止

  • 研究構成員間の上下関係、権力関係を行使して、その上位の者が下位の者に対して、研究・教育・資格付与・昇進・配分等において不当な差別を行ったり、不利益を与えてはならない。
  • 研究者は、その研究活動において、不当な中傷を行ってはならない。

13.社会通念上の倫理に反する研究の禁止

① 研究における倫理性

研究において、対象者に人権の侵害や差別を助長するおそれのあること、あるいは社会通念や法に抵触するおそれのあるものは取り上げるべきではない。

② 差別を助長する用語の使用の禁止

口頭発表・研究論文の執筆等にあたって、研究目的を外れて社会的に不適切と考えられる用語を用いてはならない。ただし、引用文献である原典において用いられている場合はこの限りではないが、その旨を明示し、不必要な人権侵害・差別が起こらないように配慮しなければならない。
学会員は、差別的表現とされる用語や社会的に不適切とされる用語について理解を深めなければならない。
制定 2021.6.1

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